2007年1月27日土曜日

二木峠から北の尾根

二木峠というのは,相生の北の矢野町と龍野を結ぶ県道5号線にある峠です。なんとWikipediaにも項目があります(何も書いてありませんが)。最初は峠から登ろうと思ったのですが,ウラジロ地獄とのことで([1],なおこのルートは,この大柿さんのルートとほぼ同じです)峠の北の186mピークの北側鞍部を目指しました。獣よけの柵がありますが,扉があって抜けられます。道の雰囲気からして,おそらくこの付近には鞍部を越して東に抜ける道があったのでしょう。鞍部に達して北に進むと,揖西郡と赤穂郡の境界の標石がいくつも転がっています。尾根に出たら,まず賀波山の四等三角点に寄り道しました。大柿さんのピンクのプラスチック板が木に下がっています。

この後はずっと尾根歩きです。時々シダが生えていたり藪っぽくなりますが,基本的に歩きやすい尾根です。小犬丸村と二木村の境界の標石とか,共同アンテナがあります。時々東や西から道が登ってきています。下界に播磨道が見えるようになると,二木村とか金坂村の石標が増えてきます。とにかく石標の多い稜線です。そして,数字入りの白いタイルを埋め込んだ,この付近ではおなじみの石標も現れます。

そして地獄谷三等三角点(314.1m)に到着ですが,展望はありません。ここから北は尾根が西に大きくカーブしています。それが東に戻ってきたところをまっすぐ進むと,尾根の終点に出て先に進めません。ここは南斜面を進まねばなりません。こうしてやっと送電線に出て来ました。ほぼ3時間の尾根歩きでした。あとは美しい楓池に寄り道し,近畿自然歩道で釜出に降りました。

長い稜線歩きはちょっと退屈ですが,時々展望もあって歩くのが好きな人にはお勧めできるコースでした。

展望 ★☆☆
藪山度 ★☆☆

2007年1月21日日曜日

書写三角点

姫路の書写山には三角点が二つあります。一つは書写山三角点(349.9m)で,これは圓教寺から北西方向のピークにあります。ここに行くには行者堂への道を進んで,途中から藪に入る必要があります。もう一つは書写三角点(270.2m)で,兵庫県立大学の東側にある西坂を登っていった途中の西側の山にあります。こちらは低山ですし圓教寺からも遠いので,あまり訪れる人はいないだろうと思います。

西坂から書写三角点に行くのに最も良いルートは,西坂が西向きから北向きに折れ曲がる所で尾根に乗ることだと思うのですが,私はベンチのあるところまで登ってから戻りました。このほうが分かりやすいのですが,ベンチの裏からは北の沢の方向(おそらく六角へ降りる道に出られる)は開けていましたが,尾根に登る方向は藪でした。通れないことはないので強行突破して尾根に登ると,気持ちの良い尾根歩きとなります。ときどきシダの間を歩く必要がありますが,木立の間は歩ける程度には開いていますし,マーキングもあります。書写三角点の周辺はシダが生えていますが,三角点は埋もれてはいません(写真。デジカメを忘れて携帯で撮りました)。

ここまで来ると,どう降りるかが問題になります。西坂に引き返すのは芸がありません。六角方面にも降りられそうですが,私は南に降りて県立大の西側の切り通しまでの尾根を目指しました。

道はないので,適当に斜面を降りていきます。シダが生えていますが,膝くらいの高さなので歩けます。しかし方向が分かりません。尾根を歩くつもりでしたが,はっきりした尾根ではないので見回してもどこが尾根かわかりません。後から考えるとコンパスで南を探してそちらに向かって歩けば良かったのですが,なんとなく足は西に向かったようで,途中で南に方向を修正しましたが,結局南西側の沢に出てきました。これはとても気持ちの良い沢でしたが,そのまま降りたら六角に行ってしまうので登り返しました。ここは三角点から見て南西にあるピークですが,尾根は西に続いているので,方向を見定めて南に行かないと,六角に降りることになると思います。

この先,山陽自動車道の上を歩いて144mピークまでは,非常に分かりにくいルートでした。斜面を降りればよいのですが,どっちに向かって降りればよいのか分かりません。目指すのは144mピークに繋がる山陽自動車上の上の鞍部なのですが,尾根と言えるものは無いので,少しずつ降りては方向を確認することになります。道っぽい歩きやすい所があるとそちらに行ってしまうので,まるで方向が定まりません。南斜面なので背の高いシダも生えており,場所によっては地面がシダで覆われて足元が見えなかったり,気をつけて進まねばなりません。ただし灌木が密集して生えている場所はないので,全く進めなくなることはありません。

悪戦苦闘のあげく山陽自動車道の上まで来ると,道が現れます。どうやら県立大学から上がってきているようです。144mピークは展望の良い岩場で,姫路が見渡せます。標高は低めですが,東も西も見える絶好のポイントです。このあと尾根沿いに道らしいものがあり,南の100m等高線のはずれも展望ポイントです。
この南には谷があり,登り返すと植林になってきます。そして切り通しの上に出ます。道路を通っているとあまり気がつきませんが,これはかなりの高さで,上に立っていると怖いのですぐに退散しました。切り通しを降りるだけの勇気も技術も装備もありませんので,植林を少し戻って,東側に植林の中を降りました。「書写記念会館駐車場」という場所に降りてきました。

低山の典型的な藪山でした。迷いやすいので,登山の練習場としては使えそうな気がします。なおこのルートでは鹿の糞を見なかったのが不思議でした。

展望 ★★★
藪山度 ★★☆

2007年1月6日土曜日

善定から矢野に抜ける

播磨新宮から国道179号線を西に行くと,平野という村があります。ここで栗栖川にかかっている橋を南に渡ると,善定という村があります。村の真ん中で道が分かれており,西に行く道は林道に繋がって二柏野から角亀につながっています。南へ行く道は札楽川に沿っており,松尾神社という農村舞台のある神社を通って,林道につながります。林道の入口左手には善定山の石切場があります。

この林道はかなり使われていて,しばしば車に会います。地形図では途中で破線道が分かれており,南に行く方は行き止まりになっています。この分岐点には,お地蔵さんがあります。ここに,おもしろいことが書いてあります。「右 山みち 一丁左 くろぞう さかきむら」と「半丁下左 ぬまいけ いせきだに」と「左 かまでみち」いうものです。

右というのは,もし本当に右なら川を渡っていきなり山の斜面です。まっすぐ行っても山で,これについてはこのブログの「札楽川の上流」をお読み下さい。「半丁下左 ぬまいけ いせきだに」は,たしかに半丁戻ると左側に楓池に行く道があります。こちらは「楓池」をお読み下さい。「いせきだに」というのはどこでしょうか?

「かまでみち」は,相生市矢野の釜出に行く道です。このルートは,途中までは亀山あたりに立っている案内板の地図で言う「善定コース」と同じです。案内板では,このコースに「迷い易い」と注が付いています。左に曲がると南に延びる破線道を歩くことになりますが,これはすぐに岩だらけになります。しかし歩くには問題ありません。道の終点に関西電力の赤い標識(ただし縦長ではなくもっと大きい)があるので迷うことはありません。標識に従って山林を登ると,鉄塔26番に出ます。ここで町界の標石のある尾根に乗って送電線を左に見ながら25番鉄塔に行きます。これは地形図で見ると送電線の方向を変えている鉄塔です。さらに気持ちの良い尾根道を歩き,再び送電線の方向を変えている播磨線24番鉄塔に着きます。この先は23番鉄塔を目指しますが,この鉄塔は矢野川を挟んで西側にありますので,巡視路を進むと矢野川に出られます。そこから川沿いに南に行けば釜出です。このルートは巡視路ばかりでつまらないとも言えますが,楽なコースです。

問題は一丁左の「くろぞう」と「さかきむら」です。「さかきむら」は榊村で,矢野町の榊だと思われます。つまり,山を越えて相生方面に抜ける道です(釜出経由でも行けますが)。問題なのは,一丁左にそのような道がないことです。一丁というのは109mだそうですが,お地蔵さんの先の左手は植林で,木の間に道はありません。しかし,地形図で見るとここの尾根に取り付けば,町界の尾根に出て,南側の釜出と榊を結ぶ破線道に出られそうです。そこで,斜面を登って尾根に出ることにしました。

最初はきつい登りですが,尾根は歩きやすく,昔は道だったかも知れません。倒木が多少あるのと,尾根に大きな岩があって進みにくい地点がある他は,軽快な尾根歩きです。椅子の形をした岩があって,座って休めます。

しばらく歩くと,送電線の鉄塔が尾根上に立っています。「播磨線27」です。そういえば札楽川沿いにこの鉄塔への巡視路がありました。「かまでみち」の途中に27番鉄塔への「火の用心」がありますので,そちらから登る道もあります。

さらに尾根沿いに進みます。落ち葉を踏んで,気持ちの良い山です。たまに倒木がありますが,小さな木なので簡単に跨げますし,ほとんどは腐りかけています。倒木でたちが悪いのは植林ですが,この付近には植林の倒木は少ないようです。軽快に歩いてゆくと,392m地点に出てきます。ここが町界です。310番の標石が埋められています。ここを直進すると,楓池の方に行くことになります。とりあえずは西に折れます。町界には番号の入った標石が埋まっており,西に行くと番号は小さくなります。この標石の上の木にはテープでマーキングがあるので,よい道しるべになります。

問題は,地形図の榊から釜出を結ぶループ状の破線道にどうやって出るかです。この付近の山は割となだらかで,地形図で見るとどこを歩いてでも南に降りられそうなので,最初に夏に行ったた時には,とりあえず適当に392m地点の西側のあたりで南に延びる尾根を伝って降りてみました。山は木立の間が適当に開いており,降りられますが,問題は降りてから,地形図で等高線の間が広く開いている場所です。ここは草や木や竹がびっしり生えていて,最悪の藪漕ぎ状態でした。しかもこの付近には石を積んで作った溝などの人工物があり,気がつかずに足を取られたら大変です。藪漕ぎをしばらく続けると,家が数軒ありました。この付近も草が茂っており,家に近づくのも容易ではありません。しかし家を過ぎて南東に進むと,道に出ました。釜出に行く破線道です。この家の所に「土砂崩壊防備保安林」の看板があって,「相生市矢野町榊字黒蔵他」と書いてあり,ここが「くろぞう」だと分かります。

この藪の中の建物は,地形図にも一つだけ載っています。ゼンリンの地図(Google map)を見ると,たくさんの建物があることになっていますが,道の方は建物群から少し西に行ったところで終わっています。実際には,この道は竹の倒木(倒竹?)が多く,特に夏は歩けません。しかし,冬に進んでいったところ,西側の湿地帯の南に出ました。倒木や倒竹が無ければ,破線道は存在すると言えます。

二回目冬に行ったときは,この建物の付近に降りないように,町界の尾根を西に進みました。分岐が多くて迷いますが,標石を確認しながら進めば問題はありません。ここでも問題は,どこで尾根を降りるかです。地形図を見ると,458mピークに行くまでの間に,広い平らな鞍部があり,ここなら楽に歩けそうです。行ってみると,ここはとても不思議な場所でした。標石294番あたりです。

この広い鞍部の北側は植林ですが,その先は沼地になっています。木の生え方から見て,雨の多い時期には池になっている可能性がありそうです。なお,地形図にはありませんが,ゼンリンの地図やGoogle Earthではこのすぐ東にも池があります。つまり,「一丁左」の先の沢を札楽川から登ると,池に突き当たります。

問題は,鞍部の南側です。ここも広い平坦な湿地帯ですが,この西側斜面には石垣があります。石垣といっても高さは1~2mですが,長さは場所によっては50mくらいあるのではないかと思います(写真はその一例です)。それが20段以上もあり,尾根近くまでずっと段々畑のようになっています。はっきりした住居跡は確認できません。これは非常に大規模な土木工事だと思います。黒蔵村は,かなり大規模な段々畑を作っていたようです。いつの時代のものか分かりませんが,石と石の間に大きな木が生えていたり,段の上の平坦地にも幹が一抱え以上もある木が生えているので,耕作地として利用していたのは大分昔のことだと思われます。この山奥で平坦地,しかも湿地ができるほど水があるのですから,古くはいわゆる隠し田だったのかも知れません。なお,ゼンリンの地図ではこの付近の西の斜面に小さな池がありますが,確認できませんでした。Google Earthは,現在この付近がちょうど高分解能と低分解能の写真の境目になっていて,よく分かりません。

最初はこの湿地帯が昔は溜池で,石積みは土砂の流入を防いでいるのかと思ったのですが,湿地帯を南に進んでも堤防のようなものは見られません。そのかわり,地形図で破線道が東西に走っている平坦地付近にも多数の石垣が見られます。これらは1974年の航空写真に写っています。波板でできた小屋の残骸もいくつかあります。東側の建物と合わせて考えると,10~20年前まで,ここは耕作地として使われていたのだろうと思います。その頃には破線道もしっかりしていて,自動車でここまで登って来られたのでしょう。ここでも「土砂崩壊防備保安林」の看板に「字黒蔵」の地図があり,建物からこの付近までが黒蔵のようです。

とりあえずの問題は,黒蔵をどうやって抜け出るかです。西に進んで破線道を探すことにしました。しかし,西は石が積まれている方向ですから,石垣を登って行くことになります。石垣と石垣の間の平坦地は,木が生えていたり草が茂っていたり,段ごとに違っています。もともとこれが耕作地なら肥料も与えたでしょうから,草や木が茂るのは当然といえます。肥料の袋も捨てられていました。

地形図で破線道が一番北まで行っている地点は,まさに段々畑(?)の東端です。西側に広がっている平坦地にはずっと石垣があります。全部登ると,破線道に相当すると思われる林道のような道があります。

この先はまず南の鞍部を越えます。ここは,榊山の三角点から降りてきたところになります。平坦地の藪漕ぎを避けるなら,町界を458mピークまで進んで,そこから南に進路を取って防衛庁の灰色のマイクロ波鉄塔経由で三角点に出て,そこからこの付近に降りてくるほうが楽です。もっと楽をするなら,三角点の北にある防衛庁のマイクロ波鉄塔の保守路(敷石の立派な舗装道路)を降りれば,あとは全部舗装道路です。榊に降りていく道は,地形図の破線道とは異なり,斜面をジグザグに走る林道です。時々沢に降りて石だらけの歩きにくい道になります。倒木や土砂崩れもありますが,歩けないほどではありません。少し斜面を降りると,また石垣がところどころにあります。

そして,播磨道の美濃山トンネルの南側の出口に出てきます。この後は,播磨道の保守用の舗装道路を下ることになります。この付近も,東側の斜面には石垣がたくさんあります。川と道路が一緒になった不思議なトンネルで播磨道を西に横切ります。その南には「西播磨水道企業団 榊配水池」がありますが,ここで大問題が生じます。道路に獣よけの扉があるのですが,鍵が掛かっているのです。周囲を見回しても,人が通れるような扉はありませんし,金網は鹿や猪が通れないのですから人も通れません。途方に暮れて川沿いに南下して,近くの田んぼの脇の金網に出入口を見つけました。もちろんこちらが不法侵入者なのですから仕方ありません。ただ,榊村から北上して山に入ろうとしても,この抜け道を知らないとこの先に進めませんのでご注意下さい。

新宮から相生方面へ斜めに抜けることだけが目的なら,「かまでみち」が正解です。黒蔵村の歴史については,相生市史に書いてあると「とんび岩通信」で見て読んでみましたが,小学校まで8キロもあり,生活は大変だったろうと思われます。

展望 ★☆☆
藪山度 ルートと季節によって★☆☆~★★★