2016年7月2日土曜日

播但線の廃トンネルを歩く

生野の南にある播但線の廃トンネルは、前から地形図で見て気になっていました。しかし廃トンネルはどこでもコンクリートで蓋をされるか柵が作られていて、入れないのが普通です。ところが[1]を読むと、今でも中に入れるようなので、行ってみることにしました。

問題は、どうやってトンネルに到達するかです。この廃線区間は市川の東側にあって、この間に橋はありません。となると方法は3つ考えられて、(1)市川を歩いて渡る、(2)播但線の鉄橋で市川を渡る、(3)北の工場を通る、(4)市川の東側の山を越える、です。(1)は長靴が必要ですし(2)は見つかると警察に連れて行かれます。(3)は知り合いがいない私には無理で、結局(4)の山越えを選びました。

出発点は生野峠です。2009/05/02に同じルートを歩いていますが、登り口を忘れました。西に向かってコンクリートの階段があり、登って植林に入ると江戸時代末期から昭和初期までの墓石がありました。その背後の植林の急斜面を登って尾根に出て、あとは尾根沿いに歩きました。アップダウンを経て、藤ノ棚三等三角点(460.81m)に着きました。周囲は原っぱですが展望はありません。ただしこの付近の尾根は木々の間からあちこちの方向が見えることがあります。さらに植林の尾根を歩いて490m+地点に出ますが、ここは迷い易い場所です。今日は南に歩きましたが、尾根が見えないので今回も迷いました。その後も植林が多いのですが、自然林もあってちょっと藪っぽい場所もあります。それでも大した問題はなく、527mピークを過ぎ、目指していた510m+ピークに着きました。三菱の黄色いプラスチック杭と頭の赤い地籍調査の杭が並んでいます。ここから北に尾根を降りました。

この尾根は降りて行くと植林になり、最後はかなり急になります。南側に寄って降りていくと、播但線の鉄橋が見えました。周囲をよく見ると、自分がトンネルの入口の上にいることに気付きました。播但線の線路に出ないで回りこむのは難しそうでしたが、トンネルの山側はしっかりした石組みになっていて、その上を歩いて降りて行くと、トンネルの南側に出られました。明治28年に作られたという割にはしっかりしたトンネルで、中に入れます。入口にレンガや材木が置かれており、最近清掃された感じです。名前は向山トンネルというそうです([1])。向こう側の出口が見通せるくらいの長さです。床はコンクリートで、壁のレンガもかなりしっかり残っています。廃線になったのは昭和2年だそうですから、80年以上も手入れをしていなかったとは思えない保存の良さです。

向山トンネルを出ると廃線の跡ですが、植林されています。倒木もありますが、山側と川側の石積みはしっかりと残っています。不思議なのは比較的新しい(とは言っても50年もの)の碍子のかけらがあちこちに落ちていることで、以前は電線が引かれていたのかも知れません。川に沿って歩いて行くので勾配はほとんど感じられません。途中に山側からの水流をまたぐ場所があって、レールは残っていませんからギャップが開いていますが、飛び越すのは難しいので山側を巻きました。この部分の石積みもしっかり残っています。写真は[1]をごらんください。途中には尾根の先を切り通した部分もあります。

そして、畑山トンネルに着きました。しかし入口は倒木などで藪化しており、しかもトンネルの入口は水没しています。長靴がないのでここはパスして、尾根の先を越しました。これが意外と急斜面を横切る場面が多く、滑落に気を使いました。途中には大きな岩もありますし、また頭上を可愛らしい送電線が越えていく場所もあります。この送電線は川尻から市川を渡って来ますが、山は越えないで、尾根を越えたらまた市川側に戻るようでした。ようやく尾根の北側にまわると、畑山トンネルの入口がありました。こちら側は水没していません。このトンネルはゆるくカーブしていますが、南の出口からの光が弱く見えます。足元は砂利です。レンガには亀裂が多く、剥がれている場所もたくさんありました。中を歩いて北の出口に近づくと、土が積もっている場所があり、その北側は水没していました(写真)。この土がどこから来たかと見上げると、頭上のレンガが剥がれて、穴が空いていました。穴の大きさに比べると土の量は多すぎるような気もしましたが、この土のおかげでトンネル全部が水没しないですんでいます。

畑山トンネルの北にも廃線跡の植林は続いており、また途中に山側からの水流をまたぐ場所がありました。そのうちに播但線の鉄橋が見えてきて、山から林道が降りてきて下を潜っていました。その先は私有地につき立入り禁止なので、林道で山に戻ることにしました。なおこの鉄橋には大正15年と書かれているようで、昭和2年に播但線のルートが変わったことと合致しています。さて林道は草は生えていないのですが、途中から倒木で塞がれてしまいます。不思議なのはこれらの倒木は自然に倒れたのではなく、伐採した木なのです。ちゃんと片付ければ良かったのだと思うのですが。頑張ってフィールドアスレチックのつもりで倒木を乗り越えたり潜ったりして、ようやく畑山トンネルの通っている尾根の上にでました。ここには「災害に強い森づくり」という朝来市の作った樹木整備の看板があり、この先はさらに良い林道になります。しかし水平に伸びているだけなので、途中から急斜面をよじ登って尾根に上がりました。尾根沿いを東に登って行くと、再び林道がありました。これも太い林道で尾根を横切っていますが、南側はやはり伐採した倒木で埋まっています。ちょっと林道を北に歩くと、伐採地に出ました。植樹してあり、ネットで囲った区画の中に植えた木は鹿避けネットで巻いてありますが、林道の路肩が崩れて鹿は自由に出入りできそうです。北には「兵庫森林組合連合会バイオマスエネルギーbe材供給センター」があって、大量の材木が積んであります。再び尾根に戻って、490m+地点に出て、藤ノ棚三角点に戻りました。

藤ノ棚三角点から少し東に降りた所には尾根を横切る浅い切通があるのですが、そこの南側にレールを発見しました。この地点で尾根を越えるという発想は分かりますし、北側には道があるようでしたが、尾根を越した南側は急斜面で、レールが延ばせるとは思えません。謎です。この後は最初に通った尾根は歩かずに、踏み跡を辿って南の尾根に出ると、木の階段が作られていました。これを降りてみたのですが、途中でシダが増えて道は不明瞭になりました。それでも谷を降りるとベンチがあって、散策路として整備されたことがあるのでしょう。ベンチからは水平に道があるのですが、藪化していて水平とはいえ歩くのは大変でした。しかもぐるっと周って国道312号線に近づいても、道との間は抜けられそうもない藪でした。結局植林に戻ってから国道に降りやすそうな場所を探すと、最初に上がった階段のすぐ近くに出てきました。

トンネルを二つとも歩けたので大満足です。整備したら福知山線のような人気スポットになるかも知れません。

展望 ☆☆☆
藪山度 ★★☆
地形図は「生野」です。

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